今日のレッスンで、純子さんという上級クラスの生徒さんとpodcastについて話していた時、次のテーマで「借りる」と「貸す」を話してほしいとのリクエストがありました。
そうだよね、純子さんのように上級で日本語ペラペラの人でも、「借りる」と「貸す」の区別がつかず、未だにはっきりしない生徒さんが実に多いんですよね。
日本人にとっては、借りると貸すは真逆(まぎゃく)の行為であり、例えば (話者はYukiko)だとして
私は田中さんに本を貸しました。つまり矢印をつけると Yukiko ⇒ 本 ⇒田中さん。という構図になりますね。一方田中さんが主語で 話者が同じくYukikoだとすると、田中さんは、私から本を借りました。 田中さん ←本 ←Yukikoということになり、これって、真逆(まぎゃく)の行為でしょ。
話者が田中さんだとしても同じことです。やっぱり「貸す」と「借りる」は真逆の動詞、何がみんなを混乱させるのか私は不思議でしかたがなかったんですが、今日、純子さんのわからないことをインタビューしていたとき、「あっ、そうか!」 と急にひらめきました。
今のような説明文の時は、みんなできるんです。 そうじゃなくて、会話になった場合、
日本人は「貸す」と「借りる」をごっちゃに使っている! いやー、日本人として生まれてこのかた、全く気が付かなかった。
ごっちゃというのは、こうです。
例えば真利亜ちゃんが消しゴムを忘れて、隣の席の翔太くんに借りたい時、なんて言うでしょう。
みんなも想像してみて。真利亜ちゃんが消しゴムを忘れて、隣の席の翔太くんに消しゴムを借りたい。
真利亜:「翔太君、消しゴムちょっと貸して」
或いは、「ねぇ、翔太君、ちょっと消しゴム借りてもいい?」
お!!いやいやほんとに、まじで、日本人としてオギャーと産まれたら、この表現は幼稚園児でも話せるわけで、つまり家庭で「それちょっと貸して」、「それちょっと借りてもいい?」と「貸す」という動詞と「借りる」という真逆の動詞を同じ意味に使っていたんですね。これは・・・・いやー生徒さん達、今まで申し訳なかった。なぜみんな真逆のことが理解できないんだろうって不思議だったけど、真逆のことを同じ意味で使うなんて・・・混乱するのは当たり前だ!
では、解説していきましょう。 自分がジュースを飲もうとして100円玉がなかった時のこと、考えてみましょう。
友達は小銭(こぜに)を持っている。あなたは小銭がない。(小銭というのは、100円玉とか10円玉とか自動販売機に入れられるようなお金のことです) 友達は小銭(こぜに)を持っている。あなたは小銭がない。でも、 ジュースが飲みたい。この場合、友達に150円貸して。と頼みますよね。 これは、主語などを入れてきれいな教科書にあるような文章にすると、あなたは、私に150円貸してくれませんか? と なります。だから、友達や親しい間柄なら、「今、小銭持ってないの、悪いけど150円貸して」という言い方になり、上司の方など(貸し借りができる間柄の人なら)「申し訳ありません、私今小銭の持ち合わせがなくて、150円貸して頂けませんでしょうか?」 つまり、貸して。貸してください。貸して頂けませんでしょうか?と丁寧度は上がっていきますが、意味は(借りたい)の意味です。 そう、ここが問題です。 借りたいのにどうして「貸して」という? つまり私は借りたい、だから、あなたは私に150円貸してください。 ということになります。これが主語がないから、借りると貸すがごっちゃになって同じように使われている・・みたいな感じに思えたと思いますが。
ここまでいいですか? もう一度行きますよ。 私は借りたい(ジュースを飲みたいけど今小銭がないから誰かに150円借りたい)その言い方が 友達なら「150円貸して」ちょっと丁寧に「150円貸してください」になり、もっと丁寧に言うときは「貸して頂けませんか?」 になります。 ここまでの解説がわからない人はscriptと一緒に図を描いておきますので、そちらを見たり、youtube で画像と字幕の解説を見たりしてみてくださいね。
次に同じ状況で 「私は借りたい」という意味の言葉を言うのに、「借りてもいい?」というと 「借りる、借りたい、借りて」と同じ動詞が活用されることになりますね。但し、この言い方の場合、借りてくださいは使えなくて私は100ドル借りたい、だからあなたは100ドル貸してください。 Please lend me 100$. という言い方しかないんです。 「借りてもいい?」を敬語で表現すると「お借りしてもよろしいでしょうか?」という表現になり、これはお金や物を借りるというより、たとえば 誰かがipadの操作に困っていて、あなたはその人の知り合いで、ちょっと助けてあげたいとき、「あのー、これ、ちょっとお借りしてもよろしいでしょうか?」という言い方をすることがあります。
結論:何か物やお金などを借りたい時は 「ちょっと貸して。 貸してください。 貸してもらってもいいですか? 貸して頂けませんでしょうか? 」という 私は借りたいので あなたは貸してください、という意味で「貸して」をたくさん、使うわけです。もちろん人によっては敬語の表現として色々な言い回しがありますが、それは混同するといけないので、また次回にしましょう。
最後になりましたが、Scriptは読みやすいように分かち書きをしています。分かち書きというのは、読点をつけないところでも読みやすいように一字スペースを空けることをいいます。